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東京地方裁判所 平成9年(ワ)20068号 判決

原告

ダイリン株式会社

右代表者代表取締役

【A】

【B】

右訴訟代理人弁護士

高初輔

右訴訟復代理人弁護士

飯田修

被告

オーエス・ラボ株式会社

右代表者代表取締役

【C】

被告

【C】

被告ら訴訟代理人弁護士

加毛修

石堂美喜子

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

被告らは、原告に対し、連帯して金八〇〇万円及びこれに対する被告オーエス・ラボ株式会社は平成一〇年三月三日から、被告【C】は同月一日からいずれも支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  争いのない事実等

一  被告【C】(以下「被告【C】」という。)は、消臭剤であるOS液を発明した。

二  被告【C】は、平成三年ころから、創和科学株式会社に、OS液を継続的に製造させていた(乙八)。

被告【C】は、原告から、OS液の継続的な購入の申入れがあったことから、原告及び創和科学株式会社と協議をし、創和科学株式会社が原告にOS液を販売し、被告【C】は原告から販売手数料を受領することとなり、創和科学株式会社は、原告に対して、平成三年四月から平成七年一二月まで継続的にOS液を販売し、原告は、これを製品にして販売した(甲一六、乙八、一一、原告代表者)。また、被告【C】は、原告から、月一〇万円の顧問料を受け取っていた(乙八、原告代表者)。

三  被告【C】は、平成五年ころ、原告の取締役に就任し、同年と平成七年に二〇〇万ずつ総額四〇〇万円を原告に出資した(甲二、一六、乙八、被告兼被告オーエス・ラボ株式会社代表者【C】)。

四  被告【C】は、平成八年一月三一日、被告オーエス・ラボ株式会社(以下「被告会社」という。)を設立し、代表取締役に就任した(甲一六、乙二、八)。

原告は、被告会社に三〇〇万円出資し、原告の代表者である【A】が被告会社の取締役に就任した(乙二、三、八、原告代表者)。

五  その後は、被告会社がOS液を製造して、原告に継続的に販売し、原告は、これを製品にして販売していた(甲一六、乙八、原告代表者)。

第三  争点及びそれに対する当事者の主張

一  争点

1  原告と被告【C】の間のOS液の独占的販売契約(以下「本件契約」という。)の成否

2  本件契約の合意解除の有無

3  被告【C】の債務不履行及び被告会社の加担行為の有無

4  損害の発生及び金額

二  争点に対する当事者の主張

1  争点1について

(原告の主張)

原告は、被告【C】との間で、平成四年三月一〇日、OS液の販売に関する一切の権利を原告が有するとの契約を締結した。

右契約は、有効期間を三年とするものの、自動延長条項があり、少なくとも平成一〇年三月一〇日までは有効であった。

(被告らの主張)

原告の右主張は否認する。

2  争点2について

(被告らの主張)

被告らは、平成九年四月ころ、原告がOS液のまがいものを製造販売していることを知ったため、原告との関係を一切絶つ目的で、被告【C】が原告の取締役を辞任し、被告【C】が有している原告の株式をすべて原告に譲渡した。また、原告代表者【A】は、被告会社の取締役を辞任し、原告が有している被告会社の株式を被告【C】が譲り受けた。

被告らは、原告に対するOS液の販売を中止し、原告は、被告【C】に対する顧問料の支払を止めた。

以上のような経緯で、被告らと原告との間のOS液の販売に関する契約は、合意解除によって終了したから、仮に本件契約が成立していたとしても、右の時点で本件契約は合意解除によって失効した。

(原告の主張)

被告らの右主張は否認する。

3  争点3について

(原告の主張)

(一) 被告【C】は、本件契約により、原告のOS液の独占販売権を侵害してはならない義務を負っているにもかかわらず、平成九年八月ころ、OS液又はそれに酷似したものである「カメリア50」及び「カメリアコンク」なる商品を自ら販売するために宣伝活動をした。

被告【C】の右行為は、本件契約の債務不履行に当たる。

(二) 被告会社は、被告【C】の右行為に加担した。

(被告らの主張)

原告の右主張はいずれも否認する。

4  争点4について

(原告の主張)

被告らの右3の行為により、原告のOS液の売上げは、平成九年七月から同年九月までの三か月間で一三七六万円減少した。

(被告らの主張)

損害の発生及び金額については争う。

第四  争点に対する判断

一  争点1について

1  被告【C】の名下に押されている印影が被告【C】の印章によるものであることは当事者間に争いがないので、右印影は被告【C】の意思に基づいて顕出されたものと推定されるから、真正に成立したものと推定すべき甲第一号証に、甲第一六号証と原告代表者尋問の結果を総合すると、原告は、被告【C】との間で、平成四年三月一〇日、次のような内容の契約を締結したものと認められる。

第一条 被告【C】を発明者とし、原告が製造販売する医薬部外品、販売名「ダイリンエチケット」及び「エチケットグミ」の原液OS液については、原告が販売に関する一切の権利を有するものとする。

第二条 原告は、前条記載の権利を、被告【C】の承諾なしに第三者に譲渡してはならない。

第三条 本契約は有効期間を三年とし、異議なき時は自動的に延長される。

第四条 本契約に定めない事項については、その都度当事者が協議して決定する。

2  右1認定の事実によると、原告は、被告【C】との間で、平成四年三月一〇日、OS液の販売に関する一切の権利を原告が有する旨の契約(本件契約)を締結したことが認められる。

3  被告兼被告会社代表者【C】は、尋問において、甲第一号証に押印したことを否定し、乙第八号証にもその旨の記載があるが、これらは、原告代表者尋問の結果に照らすと、採用できない。

二  争点2について

1  証拠(甲三、一五、乙二、八、原告代表者、被告兼被告会社代表者【C】)によると、次の事実が認められる。

(一) 原告は、平成九年二月ころから、OS液を被告会社から購入しなくなった。

(二) 原告と被告らは、同年五月ころ、取引関係を含む一切の関係を解消することとし、被告【C】が原告の取締役を辞任し、原告代表者である【A】が被告会社の取締役を辞任した。原告は、被告【C】に対する顧問料の支払を止め、被告会社は、従前原告本店の中にあった被告会社の本店を移転した。

また、原告と被告【C】は、同年五月ころ、被告【C】が有している原告の株式のすべてを代金四〇〇万円で原告に譲渡し、原告が有している被告会社の株式のすべてを代金三〇〇万円で被告【C】に譲渡し、その代金を対当額で相殺する旨約し、残額一〇〇万円については原告が被告【C】に現金で交付した。

(三) 以後、原告と被告らとの間において、OS液に関する取引は全く行われていない。

2  前記第二認定の事実に右一1認定の事実を総合すると、本件契約は、創和科学株式会社が原告にOS液を継続的に販売し、原告はそれを製品化して販売するという取引関係を前提として、その取引に際して原告にOS液の独占的販売権を与える旨の契約であり、被告会社が設立された後は、被告会社が原告にOS液を継続的に販売し、原告はそれを製品化して販売するという取引関係を前提としたものであると認められる。

右1認定の事実によると、原告と被告らは、平成九年五月ころ、OS液の取引関係をすべて終了させる旨合意したことが認められるから、本件契約についても、右時点において合意解除する旨黙示的に約したものと認められる。

二  そうすると、その余の点を判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がない。

(裁判長裁判官 森義之 裁判官 榎戸道也 裁判官 岡口基一)

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